誕生日プレゼント制度の廃止

息子の3歳の誕生日から一週間が経過。リビングの飾りをそろそろ片付けなければと思いつつ週末まではいいかと思いつつ。

1歳~2歳の誕生日は、プレゼント自体が何なのかわからないだろう思い特に何かをあげたりはしなかったが、3歳になる今年は物欲も見え始め、大好きな電車のおもちゃでも買ってあげようかと下調べをしていた。アフリカ人の夫に、「プレゼント、これにしようかと。」っと相談したところ「十分におもちゃを持っている。これ以上は不要。誕生日だからと言って無理に不要なものを買う必要はない」と言われた。夫の幼少期は、誕生日にプレゼントをもらうことはなく、生涯1人に1個おもちゃが与えられただけだという。夫は9人兄弟。確かに毎年9人におもちゃを買い与えていたら、家計に響くし家中がおもちゃだらけになる。1つのおもちゃを大切にボロボロになるまで使ったらしい。

誰が決めたのか知らないが、日本では誕生日プレゼントが制度化されている。子供の楽しみであり親の楽しみでもある。ミニマリストやシンプルライフという言葉がトレンドになってきているこのご時世、誕生日プレゼント制度廃止は粋な決断ではないかっと思い取り入れることに。幸いなことに、誕生日とは関係なく様々な人からお古のおもちゃをいただくので息子に肩身の狭い思いを強いている訳でもない。息子には現状に満足する創造力を身につけてほしいと思う。

先日キャンプにでかけた際、息子がボールで遊びたいと言い始めた。アフリカ人の夫は、チャッチャとごみ袋を丸めてビニール紐をぐるぐる巻きにして野球ボールくらいの大きさのボールを作り、息子を満足させていた。夫がいなかったら私は諦めることしか教えることができなかっただろうと物質社会に依存する創造力の乏しさを痛感した。

とはいえ、プレゼント制度完全撤廃には少し申し訳ないかと感じるところもありリビングを派手に飾り立て写真に残すことに。40年超かけて培った常識や習慣をいきなり変えることは簡単ではないなと、ポレポーレ(スワヒリ語で「時間をかけてゆっくりと」の意)で無理なく行こうと自分に言い聞かせる。

陣痛が始まったら走れ!?

息子が生まれた3年前の今頃、我が家はとても賑やかだった。アフリカから夫の「ママ」と妹が息子の出産に合わせて1か月ほど来日していた。外国を訪れるのは初めて。パスポートの発行から手続きをせねばと思っていたら、出生届が見当たらない。夫の国には戸籍が確実に存在するわけではない。ママは70年近く出生届の申請をせず生きていたようだ。毎週通っている近所の教会の牧師さんに出生届を70年遡って作成してもらい、5,000円ほどの裏金を何回か支払い何とかパスポートとビザが発行できた。半分諦めかけていたが、無事息子の出産前に来日できた。

出産予定日当日、朝から陣痛のような腹痛が始まる。うずくまって動かない私にママは「走りに行こう」の一言。分娩を短く楽にするためには動きまわることが重要だという。ママに連れられ近所の公園を少し走っては、うずくまって陣痛が去るのを待ち、またゆっくり走り出すことを2時間ほど必死で繰り返した。帰宅後早々に破水、誰よりも早く陣痛タクシーに乗り込んだのはママだった。破水した後、羊水がなくなるまでに出産しないと帝王切開になるという。病院についたころには、羊水は半分ほどしか残っていなかった。大急ぎで分娩室へ連れられ8時間後に無事自然分娩にて息子が生まれた。

人生をなるべくカラフルに彩りたいという願望が昔から強く、できる限りリスクテイカーでいようというのが私のポリシーだ。第一子を41歳で高齢出産にも関わらず、出産前のマラソンはリスクテイクしすぎたかと反省したが、ママによく似た大きな目をした息子と出会った喜びですべてが笑い話となった。

赤ちゃんが泣き止まない3つの理由

息子が生後2か月の時に仕事に復帰。私が仕事で不在の間は、アフリカ人の夫が仕事を辞めて専業主夫になり、育児に専念してくれた。専念っと言っても、かなりお気楽な育児である。泣くとミルクを大量にあげ、あとはベッドの上に放置。

ここで夫が実践した「ママ」の教えは、「常にお腹を満たすこと」だ。赤ちゃんが泣きやまない理由は3つあるという。1つ目は空腹のサイン、2つ目にオムツが気持ち悪いというサイン、3つ目にどこかが痛いというサイン。

夫の子育てプロセスは至ってシンプルだ。息子が泣くとまず、オムツをチェック。それでも泣き止まなければ、ミルクを飲まなくなるまで飲ませる。それでも泣き止まなければ、どこか痛いというサインなので病院に連れて行く。我が家の息子は大体お腹がいっぱいになると機嫌がよくなり泣くのをやめた。どれだけミルクを飲ませるかは、息子の機嫌が決める。もちろん、育児書や粉ミルクのメーカーが推奨する量などは全く参考にしない。なので実際、息子がどれだけの量のミルクを飲んでたのかは謎である。私は息子が太るのではないかとても心配ではあったけど、仕事に行ってしまえば後の祭り。帰宅後、哺乳瓶にお砂糖たっぷりのチャイが入っていた時はさすがに驚き、「カフェインとかお砂糖は、赤ちゃんには早いのでは」と意見したが、「美味しそうに飲んでた」と嬉しそうな顔で報告された。

ともあれ、常にお腹を満たされて育った息子は、夜泣きや理由なく泣き続けることは一切なく、常にご機嫌でとても穏やかな性格に育った。遺伝子の違いもあるとは思うが体格は同じ年齢の子供と比べて一回り大きい。しかし今のところ太ってはいない。ミルクの量が息子の穏やかな性格形成にどれだけ関与しているかは誰にも証明できないが、少しは影響しているのではと密かに思っている。

3歳、お誕生日おめでとう!

今日息子が3歳に!この3年間、初めてのことだらけだった。

っと言っても我が家は、母親である私が一家をささえる大黒柱として働いているので育児はアフリカ人の夫がメインで担っている。9人兄弟の4番目に生まれ育った夫は、育児書やインターネットなどの情報を何一つ参考にせず、兄弟の子育てを手伝っていた時の記憶だけで立派に息子を育て上げている。(親バカだが。)

そんな夫が唯一信頼している育児のお手本が自分の「ママ」だ。「ママは、こうしていた、こう言っていた」とよく口にするので、「ちっ、このマザコン野郎め」と話半分に聞きながしていたが、「ママ」の教えは真っ当ではないかっと思ったことがこの3年の間に何度もあった。夫の「ママ」は自分の子供9人以外に、両親と死別した孫3人、家族に恵まれなかった近所の子供を2人、自分の夫と愛人の間にできた子供2人と、合計16人を育てあげた。少子化が進む日本では信じられない数字だが、アフリカではよくある話らしい。子育ての経験値が圧倒的に高いのだ。

そんなアフリカ人の夫と義母を通して学ぶ、シンプルだけど時に厳しいアフリカ式子育て日記をこれから書き留めていこうと思う。

まずは息子よ、3年間健やかに育ってくれてありがとう!