「出産」「結婚」「他人との同居」という人生の転換期ビッグスリーを、41才で初めて経験した私は、それに順応するのに1年くらいの時間を要した。特に「他人との同居」は乗り越えなければいけない大きな壁となった。
それまで自由気ままに独身生活を謳歌していた私は、これまでの日常生活が誰からも邪魔されることのない自分の理想郷だったのだという事を思い知る。アフリカ人の夫との同居生活の中で、自分の理想が通らないと不満を感じ、それが怒りとなって夫に八つ当たりするといった事が日常的に起こった。理想と言っても、とても些細な事。食事を始めるのは、皆がテーブルに揃って「いただきます」と言ってから。週末はできるだけ家族で過ごす。就寝2時間前は食事を避ける。時間を守る。など。理想というより当たり前のことだと思っていた。(アフリカ人の夫にとっては当たり前の事ではない。)
そんなある日、「君はアンガーマネジメントを学ぶ必要がある。」と夫より提案がある。夫も夫なりに悩んでいたのだろう。アンガーマネジメントという言葉を始めて聞いた私は、1冊教本(マンガで解説されている簡単なもの)を読んでみた。そこには、アンガーマネジメント実践に役立つ方法などが5~6項目掲載されていたが、その中で一番簡単そうな「怒りが発生したら7秒我慢する。」という作法を日々の生活に取り入れることにした。実践し始めて1ケ月で効果が見られる。怒る回数が断然に減ったのだ。実践して1年経った今、私の中の怒りという感情はほぼ消滅した。
私の怒りの感情は、
「食事は家族そろって頂きますっと言ってから食べるべきなのに、私を待たず先に食べ始めるなんて・・・!息子に悪影響を与えるじゃないか!ムカーーーーーーっ!」 7秒沈黙を保つ。苦しい時は目を閉じて深呼吸する。その間に色んな思考が頭の中を駆け巡る。「もしかして、待つことも難しいくらい美味しそうな食事を作った私が悪いのかもしれない。息子は保育園でちゃんといただきますという日本のマナーを教えているからまぁ、そこは妥協したらいいか。大きくなって物事が理解できるようになってきたら、パパはお行儀が悪いんだよと伝えよう。」そんな私の前で、ニコニコと幸せそうにおいしそうに食事を食べる旦那を見ていると「細かいこというのはやめよう。私も早く食べよう。」 っとなる。
それを繰り返すうちに、『食事を始めるのは、皆がテーブルに揃って「いただきます」と言ってから。』という理想という名の昔からの習慣がどうでもよいものに変わっていき、「ムカ――――」っという感情すらわかなくなっていったのである。「諦め」ともとれるかもしれないが、自分の怒りで他人に不愉快な思いをさせるという危害は発生しない。ここ最近は夫の方から、「いただきます」と言ったりするようになった。食べる前に感謝し祈ることはクリスチャンである夫にとっても普通のことで、今までは私の怒りへの反発で、あまりいうことを聞いてくれなかったのだなぁっと思い始める。
このエクササイズは、職場でもずいぶん役に立ち、私の性格を穏やかなものに変えてくれた。夫からは「最近怒らないね。僕のアドバイスのお蔭さ。」と得意げに言われた。「いや、あの読みやすく解説されていた教本のお陰。そして実践した私もほめてよ。。。」とは言わずに7秒後に「Thanks!」と笑顔で伝えた。